カーラーマ経
一区切りついたと言ったブログですが、とても大切な教えが抜けていましたので、今回は番外編です。
これはブッダがカーラーマ一族に教えた内容で、ブッダの一番弟子で智慧第一と呼ばれる阿羅漢のサーリプッタ尊者は、これが一番貴重な教えだと言ったと伝えられています。下記の十項目の教えです。
1.みんなで言い伝えてきたからといって信じてはいけない。
2.永く伝承してきたからといって信じてはいけない。
3.評判になっているからといって信じてはいけない。
4.テキスト(経典)にあるからといって信じてはいけない。
5.理論に合っているからといって信じてはいけない。
6.哲学に合っているからといって信じてはいけない。
7.常識だからといって信じてはいけない。
8.自分の考えに合っているからといって信じてはいけない。
9.信頼できそうな人の話だからといって信じてはいけない。
10.自分の師や僧の言葉だからといって信じてはいけない
つまりブッダは「ブッダが言ったから」と言う理由で信じるな、と言っているのです。これは「信じるものは救われる」と言う宗教では考えられない事ではないでしょうか。
これはブッダの教えの一番の特徴で、「現実を良く見て、観察、体験できない、あり得ない事は誰の言葉だろうと、どんな理屈があろうと信じてはいけない」と言う訓辞です。この様な考え方、方法論は現代科学と全く同じと言えます。ブッダダンマが科学と異なるのは、観察対象が現代科学が扱うような無常のものの扱い方、法則ではないことです。 つまり、生きる上で発生する苦を減らす事を目的としていおり、そのために必要十分な教えだけがある点です。
また、一方でブッダは「どのような教えだろうと滅苦に繋がる教えは私の言葉に一致する」とも言っています。
ブッダの教えを学ぶ人で一番陥り易いのは、僧(お坊さん)なら1と2と4、普通の在家の人なら7から10全てでしょう。「有名なお坊さんが言うんだから間違いない(はず)」とか、「このお坊さんは好きだから信じる」と言う間違いを犯す人はとても多いのではないでしょうか。実はそう言う信用の仕方には、滅苦の実感や体験に基づく根拠は何も無いのです。ですからそのお坊さんがもし故意だろうと無自覚だろうと間違った教えを言っていれば、滅苦にならない実践をして時間を無駄にする事になります。
ブッダは既にこの事を2500年以上前に予測していた訳です。その慧眼には全く感服しますが、その智慧もまたブッダならではと言う事が出来るでしょう。
もしブッダの教えを学んでいる人で、いつまで経っても、それこそ十年以上とか学んでいても欲も怒りも減らずに、心が進歩していないな、と感じる事があるなら、このカーラーマ経に従って学ぶ方法を検証する必要があると思います。
書いている本人が言うのも何ですが、当然このブログの内容もカーラーマ経に従って無批判に信用する事は出来ません。長くやっても心の進歩を感じられないなら、自分の実践方法と教える人の両方を検証する必要があります。
しかしこれは言うは易しで実際には簡単ではありません。そこでブッダの言葉だけを集めたターン・プッタタートの「ブッダヴァチャナ」シリーズの本とその和訳がありますので、ご覧になることをお勧めします。